生まれ変わった新生ジバンシィ──クレア・ワイト・ケラーの手掛ける服には不思議なヌケ感がある

 この5年のウィメンズのトレンドの多くは、クレア・ワイト・ケラーの手から生まれた。そんな才女が、ジバンシィのディレクターに就任した。彼女の手掛ける新生ジバンシィの行方は?

Words: Kaijiro Masuda Photo: Daigo Nagao Styling: Akito Kitano
生まれ変わったジバンシィ──クレアの手掛ける新生ジバンシィは不思議なヌケ感がある スウィングトップもエレガント!!──思わずステップを踏みたくなるような真っ赤な50’s風のブルゾンは、新生ジバンシィを象徴する逸品。ステッチで表現した胸元のウエスタンヨーク、スポーティなボーダーのリブなど、細部にまでに神経の行き届いたクリエーションが光る。ジャケット ¥189,000、シャツ ¥109,000

ジバンシィの根底にはエレガンスがある

 ユベール・ド・ジバンシィは、2月に91歳の誕生日を迎える。1927年にフランス北部の小さな街、ボーヴェで生を享けたユベールは、パリ万博の衣装に魅了されたのをきっかけに、ファッションデザイナーを志す。いくつかのメゾンで経験を積んだ後、1952年にジバンシィを設立。ファーストコレクションで、ブラウスとスカートからなる”セパレーツ”を発表し、モード界にセンセーションを巻き起こす。以来、1995年に引退するまで、ミューズ的存在だった女優のオードリー・ヘップバーンをはじめ、世界中の女性を魅了する服を作り続けてきた。

 その一方で、ユベールはメンズファッションの世界にもいち早く進出している。1959年に2つのメンズフレグランスを作ったのを皮切りに、1969年にメンズのプレタポルテのブランド、Givenchy Gentleman(ジバンシィ ジェントルマン)を発表。こんにちに連なるジバンシィのメンズの歴史は、ここから始まったのだ。

 1982年のフランスの日刊紙『L’Orient Le Jour』で、ユベールはメンズのクリエーションについて、このように発言している。「私はクラシックを重視し、個人的には構造的な装いを好みます。厳格なスタイルが好きなのでしょう。しかし、時に構造的なスタイルは定型化されてしまうことがあります。だからこそ、適度なカジュアル感を加えることで型にはまることを避けるのですが、これもまたやりすぎれば蛇足になります。つまり、双方の良いところだけを抽出して、組み合わせることが重要です」

 この発言から分かるように、ユベールが手掛けていたジバンシィ ジェントルマンは、クラシックとカジュアルのバランスに長けた優雅なブランドだった。長身でハンサムでエレガントなユベール本人を体現するようなブランドだったのだ。

エレガントでロックなクレアのジバンシィ

 ウィメンズのトレンドを牽引してきたクレア・ワイト・ケラーは、2017年にジバンシィのアーティスティック・ディレクターに就任した。彼女に与えられた任務は、オートクチュールおよび、ウィメンズとメンズのプレタポルテ、アクセサリーのデザイン。クレアはどのように新生ジバンシィを調理したのだろうか?

 クレアの初陣となる2018年春夏コレクションは、男女の合同ショー形式で発表された。68体のうちメンズは27体。ユベールへのオマージュをちりばめつつも、トラッドとロックとウエスタンをバランス良くミックスさせた、クレアらしいコレクションだった。

 ジャケットは着丈が長めのシングルで、ウエスタンヨーク以外の装飾を廃したミニマルなデザインが特徴。合わせるパンツは細身のスキニーが中心で、靴はウエスタン調のブーツだ。片袖がレッドになったライダースコート、表革とスウェードを胸元で切り替えたブルゾンなど、レザーが充実しているのもトピックのひとつ。後半のスーツのルックは、ギラギラしすぎていない風格のあるロックスターを連想させる。シルエットは全体的に細身で、いち早くオーバーサイズからタイトへの回帰を提案しているのも流石だ。

 もっともクレアらしいと思ったのが、金ボタンのネイビーブレザーとトレンチコート。ネイビーブレザーの肩のラインは、行き過ぎない絶妙のバランスのスクエアショルダーで、4つのボタンや袖丈のバランスは、堅苦しくなくリラックスした雰囲気。モードでもトラッドでもない独特の雰囲気が目新しく映る。ブラックウォッチの色調のトレンチコートも、トラッド過ぎないヌケ感がある。

 この説明しがたい”不思議なヌケ感”がクレアの持ち味なのだと思う。表面的にはロックなルックでも、どこか品の良さが見え隠れするのは、クレアがジバンシィの本質を深く理解している証拠でもある。ユベールのジバンシィ ジェントルマンの品格を受け継ぐ。

転載サイト:https://gqjapan.jp/fashion/wardrobe/20180130/new-givenchy/page/2

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